研究概要 |
1)105例の食道扁平上皮癌切除検体に対してCCR7の免疫組織染色を行ったところ,CCR7陽性例28例(27%)はリンパ節転移と有意する強力な予後不良因子であることが明らかとなった. 2)食道癌腋窩リンパ節転移モデルを用いた抗CCR7抗体を用いた転移抑制の検討 新たに食道扁平上皮癌細胞株TE4にCCR7を遺伝子導入したTE4-CCR7過剰発現株を作製し,BALB/Cヌードマウスの手掌にTE4株とTE4-CCR7過剰発現株をそれぞれ移植したところ,TE4-CCR7過剰発現株では有意に早期から腋窩リンパ節転移が生じることが明らかとなった.現在抗CCR7抗体を用いて転移阻害実験を行っている. 3)TE4株とTE4-CCR7過剰発現株の比較によるリンパ節転移機構の解明 TE4株とTE4-CCR7過剰発現株にリガンドであるCCL21を添加すると,TE4-CCR7過剰発現株では有意にVEGF-Cの発現が増加することが明らかとなった.この結果から食道扁平上皮癌におけるCCR7発現がVEGF-Cを介してリンパ管新生を惹起し,よりリンパ節転移しやすい環境を作っている可能性が示唆された.先述の食道癌腋窩リンパ節転移モデルにおいてもTE4-CCR7過剰発現株ではTE4株に比べて腫瘍周囲のリンパ管新生やリンパ管侵襲が亢進していた.現在食道癌切除検体でのCCR7発現とVEGF-C発現,リンパ管新生との関連を検討している. 4)同動物モデルを用いて現在CXCR4の関与を検討中であり,抗HIV治療薬であるAMD3100投与実験を開始予定である.
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