研究概要 |
1)マウス転移モデルにおける原発巣、リンパ節転移巣の病理組織学的解析: 22種類の大腸癌細胞株のリンパ節転移実験のマウス標本(Sasaki,et al.Cancer Sci.2008;99(4):711-9)における、epithelial-to-mesenchymal transition(EMT)を含めた病理・免疫組織学的な解析を進めてきた。EMTについて、まずE-cadherin,vimentinについて免疫組織化学的に解析を進めた。HCT116細胞株においてE-cadherin(-),vimentin(+)、HT29細胞株でE-cadherin(+),vimentin(-)など対照的な結果が得られ、現在22種での全容を明らかにしている。さらにfibronectin,cytokeratinなどの免疫組織化学にもとづく発現も、原発巣および転移巣について解析している。 2)候補遺伝子群(RNF125,TCF25,CRIP1,LOXL3,EN2,P2RX5遺伝子、その他)の臨床検体における発現の検討: リンパ節転移を有した大腸癌細胞株で高発現であった遺伝子群(RNFI25,TCF25,CRIP1,その他)、低発現であった遺伝子群(LOXL3,EN2,P2RX5,その他)について、臨床検体を用いて定量RT-PCRによる発現の検討を行ってきた。進行度との相関において、RNF125,CRIP1の両遺伝子については、stageが進むごとに発現量が上昇する傾向を認めた(RNF125:II:2.3±0.4AU;III:6.0±2.3,IV:6.2±4.1,など)。一方、LOXL3,EN2,P2RX5遺伝子については、stageが進むごとに発現量が低下する傾向と推察するが、発現量と照らし合わせて検証を進めている。 3)beta-cateninの発現解析 大腸癌細胞株の原発巣、転移巣の解析において、beta-cateninの核内集積、細胞質内への集積、細胞膜への集積など、22種間で特徴的な結果が得られてきている。 4)22種類の大腸癌細胞株において、リンパ節転移以外の転移様式の解析: 同所移植モデルにて肝転移を有する大腸癌細胞株(HT-29,CX4,T84,HST116,COLO320など)と肝転移を有しない大腸癌細胞株(KM12c,CloneA,MIP101など)について、マイクロアレイデータとの相関から、肝転移を規定している遺伝子群の抽出を試みている。
|