研究概要 |
進行大腸癌においては、手術に加えて化学療法を行うことが標準治療となっており、加えて最近では抗VEGF抗体bevacizumabや受容体型チロシンキナーゼ阻害剤cetuximabが本邦でも承認された。これらの治療によく反応する患者群が存在する一方で、依然として治療抵抗性を示す群が半数を占めているのが現状である。癌発育進展に関わるシグナル伝達経路が多岐にわたるためであり、従って各シグナル伝達経路の下流で働く分子を標的とした治療薬の開発、臨床応用が必要と考えられる。今回我々の着目するPI3K-Akt-mTORシグナル伝達経路は、ras-MAPキナーゼ経路と同様、チロシンキナーゼ型受容体の下流にある経路であり、蛋白の転写調節、細胞周期制御、血管新生、アポトーシス制御など多様な細胞機能を司る。 大腸癌細胞株(CaRI, HT-29,など)において、比較的上流に存在するPI3Kの阻害剤LY-294002, wortmannin処理を行い、細胞株の増殖への影響を観察した。細胞増殖曲線、MTSアッセイ、細胞周期解析などで検討を行った。さらにAkt,リン酸化Akt,リン酸化mTOR, S6K、リン酸化S6Kのレベルをウエスタンブロッティング法で検討した。
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