5FUで1年間処理することによって樹立した胃癌細胞株MKN45/F2Rを、その親株MKN45と比較検討した。耐性株MKN45/F2Rは親株MKN45と比較し5FUに対しては48倍、Paxlitaxelに対しては600倍の耐性を呈し、5FUの耐性はOPRTの発現低下、Paclitaxel耐性はP-glycoproteinの発現増加によることが去年度までに明らかになった。今年度は、抗癌剤とFanconi貧血経路の関連について検討し、そこから5FUとoxaliplatinの相乗効果について新しい知見を得た。 Fanconi貧血経路とはDNA修復に関連する経路であるが、MKN45を5FUで処理すると、Fanconi貧血経路の因子の一つであるFANCJが減少する現象を認めた。FANCJの明らかになっている機能は、1.BRCA1と結合し、DNA二重鎖切断(DSB)の修復に関与する、2.MLHと結合しInterstrand cross-link(ICL)の修復に関与する、の二つであるが、5FUは間接的にDSBを生じると言われ、oxaliplatinはその細胞障害性の作用機序としてICLを生じる。よって、FANCJは5FUとoxaliplatinの相乗効果に関連することが予測された。実際、5FUでMKN45を処理するとDSBを生じそれに伴いBRCA1が誘導され、続いてFANCJが減少した。Oxaliplatinで処理した場合にはMLH1とFANCJの結合が増加することが明らかとなった。FANCJをsiRNAにてknock downするとoxaliplatinの感受性が上昇することから、5FU処理によりFANCJが減少することが、oxalipatinの感受性を上昇させ、相乗効果を呈する、という結論に至った。
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