当施設倫理審査委員会より「炭酸ガス送気内視鏡とエア送気内視鏡のランダム化比較試験」の承認を得た後、研究プロトコルに準じて下記の2課題に取り組んだ。 課題I:炎症性腸疾患に対する炭酸ガス送気内視鏡の実用性の検証 11例の炭酸ガス送気消化管内視鏡検査を行った結果、検査所用時間は平均22分であり、対照群であるエア送気群(平均20分)との間に統計学的な有意差を認めなかった。また両群ともに検査に伴う偶発症は認めなかった。検査施行医による送気力、送気スピード、送水力、送気頻度の4項目に関する5段階評価では、いずれの項目についても対照群であるエア送気群(n=16)との間に有意差を認めなかった。 以上より、炎症性腸疾患に対する炭酸ガス送気内視鏡の実用性には特に問題はないものと考えられた。 課題II:炎症性腸疾患に対する炭酸ガス送気内視鏡の安全性の検証 1. 経皮炭酸ガス分圧計(TOSCA 500ラジオメータ・バーゼル社)を用いて呼気終末炭酸ガス分圧を連続的に記録した結果、安定したデータが得られた後半の6例においては、異常な炭酸ガス分圧の上昇を認めなかった。 2. 無作為に並び替えた連続撮影内視鏡画像の盲検による検証では、炭酸ガス送気群の1例に経時的な粘膜発赤の増強が指摘されたが、エア送気群との間に統計学的な有意差は認めなかろた。粘膜生検を行った10例(炭酸ガス誰3例、エア群7例)においては、両群ともに生検部位の止血に問題を認めなかった。臓器反射スペクトル解析装置による腸管壁酸素飽和度の経時的変化は、パイロット研究の段階で技術的に因難かっ再現性に乏しいことが判明したため、以後の検討から除外した。また両群において、検査前、検査後1日、1週周、1ヶ月の病勢活動性スコアに差を認めなかった。 以上より、データ数が乏しいものの現時点では炎症性腸疾患に対する炭酸ガス送気内視鏡の安全性に深刻な問題はないものと考えられた。
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