【炎症性腸疾患に対する炭酸ガス送気内視鏡の有効性の検証】 <方法>クローン病もしくは潰瘍性大腸炎の患者で、病状観察や治療を目的として上部消化管内視鏡、小腸内視鏡、大腸内視鏡および潰瘍性大腸炎大腸全摘術後の回腸嚢内視鏡を施行する症例を、通常のエア送気群、もしくは消化管内視鏡専用炭酸ガス送気装置(UCR)を用いた炭酸ガス送気群のいずれかに無作為割り付けて内視鏡検査を行った。検査終了後は腹部レントゲン撮影を行って5段階スコアで腹部ガスの残存状況を評価するとともに、内視鏡施行前後の病勢変化をCDAI等の病勢インデックスを用いて臨床的に評価し記録した。 <結果>H24年3月までに計11名(クローン病4名、潰瘍性大腸炎7名)の炎症性腸疾患患者について上記評価を行った。クローン病の4名は小腸大腸型2名、大腸型2名、潰瘍性大腸炎の患者はすべて全大腸炎型、術前2名、術後(回腸嚢内視鏡の評価)5名であった。無作為割り付けの結果、5名がエア送気群、6名が炭酸ガス送気群に割り付けられた。両群間には年齢、性別、病型、罹病期間、内視鏡施行時の病勢スコアに有意差は認めなかった。内視鏡は全例で合併症なく完遂し、内視鏡施行時間の中央値はエア送気群21分、炭酸ガス送気群19分で両群間に有意差を認めなかった。検査中に生検を施行した症例は各群4名ずつで、いずれも出血等の偶発症を認めず。検査後の腹部ガス残存状況を5段階スコアの中央値で評価すると、エア送気群、炭酸ガス送気群ともにスコア=3で差を認めなかった。また、両群間で検査後の病勢にも変化を認めなかった。 <考察>炎症性腸疾患に対する炭酸ガス送気内視鏡はエア送気内視鏡と比して完遂性、安全性の面で非劣性であることが示唆された。引き続き症例を集積し、さらなる検討を重ねていく予定である。
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