研究概要 |
本研究では、大腸癌臨床検体を用いて大腸癌におけるING2遺伝子の発現解析と大腸癌培養細胞株を用いてING2遺伝子の転写発現制御また大腸癌における臨床学的意義を解明し、臨床応用可能となりうる分子標的治療の開発を目的とする。 (1) ヒト培養細胞株に、ING2の発現をアデノウイルスベクターを用いて、ING2を高発現し、連動する遺伝子を調べた結果、HSP70の発現上昇が認められた。このことからING2遺伝子が、抗癌剤耐性や放射線治療耐性に関与していることが見いだされた。下部進行直腸癌に対し、術前化学放射線療法を施行された36例に関して、ING2の発現と化学放射線療法の治療効果について検討した。その結果、ING2の発現が高いと化学放射線療法の治療効果が悪い傾向にあった。 (2) 上記に関連して、ING2遺伝子の過剰発現により連動する遺伝子群のなかで特にABCトランスポーター71遺伝子について解析した結果、ING2高発現により、ABCA12とABCC10の発現が亢進していた。一方、ABCB1, ABCD4, TAP1, TAP2, SLC15A1はING2高発現により、発現が減弱していた。これらの結果に基づき、今後薬剤耐性との関連を調べる。
|