本研究では、大腸癌臨床検体を用いて大腸癌におけるING2遺伝子の発現解析と大腸癌培養細胞株を用いてING2遺伝子の転写発現制御、また大腸癌における臨床学的意義を解明し、臨床応用可能となりうる分子標的治療の開発を目的とする。 (1)さらに大腸癌臨床検体を追加して、ING2抗体で組織染色を行い、癌部と非癌部におけるING2の発現を検索した。同一症例で非癌組織に比べて癌組織での発現が亢進している症例は、200例の染色を終了した時点で、約40%に認められた。 (2)大腸癌培養細胞株にING2遺伝子を過剰発現させ、遺伝子導入前の細胞株と遺伝子導入しING2を過剰発現細胞の遺伝子発現をマイクロアレイにて検索した。その結果、ING2の発現とともに連動する遺伝子を複数見出した。これら遺伝子についてING2との関連を明ら かにしているところである。 (3)ING2遺伝子が、大腸癌の化学療法に与える影響や、下部直腸癌の術前化学放射線療法の効果に寄与するかどうか、臨床検体を用いて調べた。化学療法施行前のING2の発現と奏効率に関係について、特に下部直腸癌の術前化学放射線療法の効果と施行前のING2の発 現との関連について調べた。ING2の発現が認められる症例で、放射線治療の効果が弱い傾向が見受けられた。
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