研究概要 |
大腸癌における血中および腹腔遊離癌細胞(isolated tumor cells : ITC)は、従来の病理学的因子を凌ぐ転移・再発および予後予測因子として、癌治療効果のバイオマーカーとして注目されている。また近年、多分化能と自己複製能を持つ癌幹細胞が、転移において重用であることが報告された。さらに宿主側の要因も転移形成に重要な役割を果たすとの報告もあり、ITCと転移形成に関する新たな局面が展開されつつある。我々はこれまで、CEA,CK20といった一般的腫瘍マーカーおよび上皮系マーカーを指標として、血中および腹腔洗浄液中ITCを分子生物学的手法で検出し、再発予測因子としての有用性を報告してきた(Iinuma H et al.Int J Oncol 2006 ; 28 : 297, Hayama T, Iinuma H, Watanabe T.Oncol Rep.18 : 779, 2007)。 本年度はまず、DNAアレイを用いて、大腸癌の肝転移に関連した新たな遺伝子をスクリーニングした。次に、大腸癌患者約500例を対象に、これらの転移関連遺伝子に癌幹細胞および宿主側関連分子などを含めたmultiple markerを用いて、血中の転移能を有したITCを検出し、転移再発・予後予測因子として有用性を検討した。Kaplan Meier生存曲線やCox比例ハザードモデルによる多変量解析の結果、これらのmultiple markerを測定することにより、癌再発および予後の予測診断が可能であることが明らかとなった。
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