21年度の研究の意義と目的:腸管の最外層を構成する腹膜の再生は、再生腸管の重要機能である蠕動運動機能の保持に極めて大切である。まぜなら再生消化管は、その腹膜面の再生修復現象の結果として腸管腹膜面が周囲組織と瘢痕癒着する。この癒着は再生腸管を周囲組織に固定し、その結果、腸管蠕動運動が阻害される。つまり腸管再生には、腹膜面の再生と癒着というジレンマがあり、再生腸管に蠕動機能を持たせるには、腹膜面を再生しかつ癒着を防止する必要がある。 方法と結果:特許出願準備中の関係で詳細は避ける。上記の腹膜再生と癒着防止の両立させて羊膜を用いた腸管組織構造再構成を行うため、羊膜を構成する要素にも含まれるある種の生体内分解性の膜を新規に作成して再生の足場とした。ビーグル犬の腸管腹膜を損傷し、その部位に本新規開発膜、あるいは従来の癒着防止材、あるいは羊膜自体を貼付した。対照には何も貼付しなかった。3週間後と6週間後に犬を犠牲しせしめ、腸管を採取して肉眼的あるいは病理組織学的にこの部位の癒着と瘢痕形成あるいは腹膜の再生を検討した。その結果、何も貼付しなかった群では、肉眼的に顕著な癒着を認め、また病理組織学的には癒着を示す瘢痕組織の形成を認めた。しかし新規開発の膜や従来の癒着防止材、あるいは羊膜自体を貼付した群では肉眼的に癒着は極めて軽度で、対照群と有意の差異を認めた。新規開発の膜を貼付した群と羊膜自体を貼付した群では、3週間で腹膜の再生を認めたが、従来の癒着防止材では腹膜の再生は認めなかった。この結果は、新規開発された膜は羊膜自体と同様に腸管組織再構成の足場として使用可能であることを示唆している。 結論:新規開発の生体内分解性膜は、癒着防止と腸管腹膜再生を両立可能な新規の再生足場として、腸管再生に有用と考えられる。
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