研究概要 |
1)Fecoflowmetryの評価項目の設定:術後6年以上経過した小児直腸肛門外科術後遠隔期例12例(Hirschsprung病術後1例,直腸肛門奇形術後11例)に対しfecoflowmetry(以下,FFM)を施行。排便機能良好例ではfecoflow pattern(FFP)はBlockとSegmentalであった。Kellyの臨床スコア(以下,KCS)高値例では,模擬便流最大排出速度(Fmax),肛門管静止圧(AP),模擬便排出率(ER)も有意に高値であった。更にFmaxとAP, ERに有意な正の相関を認め,FFPがBlockの症例はFmax, ER共に有意に高値であった。FFMではFmax, ER, FFPが特に有用であった。 2)Fecoflowmeterの更なる改良:現在まで蓄積してきたFFMのデータを元に,縦軸の模擬便流速度のフルスケールを100-200ml/secと予想流量にあったスケール選択可能な,横軸の目盛を5秒から10秒に変更し長時間記録可能な,便座も小児でも着席可能な新しいFecoflowmeterを導入した。成人直腸癌術前術後の排便機能評価に試験的に使用し,上述のスケール変更によって様々なFFMが可能になった。 3)Fecoflowmeteryによる消化管作動漢方製剤の客観的薬効判定:機能的便秘の分類には弛緩型,直腸型,痙攣型がある。小児直腸肛門外科術後例の頑固な便秘には弛緩形が多いと思われる。まず弛緩型に対しては大黄を含まない処方を考慮し,大建中湯を第1選択とした。まず,直腸肛門奇形術後遠隔期例の中で下剤抵抗性の頑固な便秘症例6例(高位1例,中間位4例,低位1例)に対し,酸化マグネシウムの他に大建中湯0.3g/kg/dayを平均127.5日間内服させ,投与前後のKCSおよびFFMの各パラメーターを比較検討した。投与後にはKCSは改善傾向を示し,Fmax, ERは各々,有意に高値に改善された。大建中湯は下部直腸クリアランスを改善させる可能性が示唆された。
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