研究概要 |
昨年度までにFecoflowmetery(FFM)による客観的排便機能評価における有力なパラメーターの確認と、現在まで蓄積してきたFFMのデータを元に,縦軸の模擬便流速度のフルスケールを100-200ml/secと予想流量にあったスケール選択可能な横軸の目盛を5秒から10秒に変更し長時間記録可能な,便座も小児でも着席可能な新しいFecoflowmeterを導入がなされた。成人直腸癌術前術後の排便機能評価に試験的に使用し,上述のスケール変更によって様々なFFMが可能になり、実際に成人直腸癌術前術後の排便機能評価にも応用した。更に、今年度は排便機能障害例に対し漢方製剤の治療効果判定として大建中湯(以下、本剤)を用いた。本剤は主に下部消化管運動を促進させ、慢性便秘、イレウスの治療に頻用される最も有名な漢方製剤であるが、エビデンスに乏しい。今回、FFMを用いて、排便機能障害例に対する本剤の治療効果を検討した。当科および当科関連病院で根治術を施行した直腸肛門奇形術後遠隔期患児(平均7.8歳)のうち、特に高度な排便障害を呈する6例を対象とし、従来より内服していた酸化マグネシウムに加え、大建中湯(0.39/kg、分2ないし分3)を平均127.5日間内服させ、投与前後における臨床排便スコア(Kelly'score, KCS)、FFMにおける排便パターン(FFP)、最大模擬便排出速度(Fmax)、模擬便耐容率(TR)、模擬便排出率(ER)、肛門内圧測定結果を比較、検討した。大建中湯投与により、KCSは改善傾向(p=0.07)、Fmax、ERは有意に高値となった(p=0.029,p=0.029)。大建中湯投与後、最大模擬便排出速度、模擬便排出率の改善を認めたことにより、大建中湯は下部直腸クリアランスを有意に改善させうることが判明し、またFFMは排便機能の治療効果判定に有効であることが示唆され、成果は英文誌に投稿し掲載された。
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