研究概要 |
小児における排便機能障害の頻度は高いが、病態や病型によって個体差も含め様々な差が認められる。そのため排便機能を客観的に評価する方法を見つけ実践することは極めて意義深い。加温生理食塩水模擬便によるfecal streamをコンピューター内蔵の電子天秤で連続的に経時記録し、のちにコンピューター解析し排便曲線を描出させ排便動態を計測評価するfecoflowmetry(FFM)を研究代表者は以前より導入し検討を加えてきたがその有用性は高い。今回、そのパラメーターの再チェックと測定範囲を可変式にしたfecoflowmeterを新たに導入し、各種排便障害例に適応し、FFMの観点から病態を把握し、漢方治療を行いその効果を判定した。 下部直腸癌術後の44例に応用し、従来の内圧検査だけではなく、FFMによるfecoflow pattern(FFP)模擬便流最大排出速度(Fmax)、模擬便排出率(ER)、模擬便耐容率(TR)などが排便機能評価上有用であった。 潰瘍性大腸炎での大腸全摘W型回腸嚢再建例での排便障害の漢方を中心とする薬物治療を行う前のFFMによる評価を16例対して合わせて行い、FFPはblock型が87%であったこと、術後経過年数とFmaxやTRとの強い相関、などが判明し、改めてFFMの有用性が確認された。 直腸肛門奇形術後遠隔期例の中で下剤抵抗性の頑固な便秘症例6例(高位1例、中間位4例、低位1例)に対し、酸化マグネシウムの他に大建中湯0.3g/kg/dayを平均127.5日間内服させ,投与前後の臨床排便スコア(Kelly's Score, KCS)およびFFMの各パラメーターを比較検討した。投与後にはKCSは改善傾向を示し、Fmax、ERは各々、有意に高値に改善された。大建中湯は下部直腸クリアランスを改善させる可能性が示唆された。 その他、大建中湯不応例など実証の患者に大黄甘草湯、調胃承気湯、潤腸湯などを投与し、投与前後でFFM上、明らかな改善が認められた。FFMは排便機能の評価だけでなく、漢方治療前後の効果判定上、極めて有用であった。
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