本研究は細胞間接着の一つであるTight Junction(以下TJ)特異的蛋白質であるclaudin(以下CL)-1の発現と大腸癌術後の再発や転移との関連性や、大腸癌細胞株におけるCL-1の機能的な役割など未だ解明されていない問題を解決し、大腸癌術後の患者における治療や生存率改善など臨床応用へと展開するための研究基盤を確立することが目的である。平成21年度は、 1)大腸癌患者からの同意を得る。標本およびの検査・病理組織学的所見の把握 2)大腸癌摘出標本におけるCL-1発現と病理組織学的所見との関連性の検討 3)血清中CEA濃度とCL-1発現の比較検討 4)局所再発・転移(リンパ節、肝、肺など)した大腸癌原発巣とCL-1発現との関連性の検討 を計画していた。現在までの進捗状況は、大腸癌の中でも局所再発や遠隔転移(肝・肺など)の頻度の多い「直腸癌」を中心に摘出標本におけるCL-1発現と病理組織学的所見との関連性を検討した。現在までに、306症例の直腸癌病巣および正常直腸粘膜をCL-1などの抗体を用いて免疫染色を行った。その結果を解析し病理組織学的所見との関連性を検討したところ、CL-1発現が予後などに関連があるとの新しい知見が得られつつある。また、術後の局所再発・転移(リンパ節、肝、肺など)との関連性の解析も進行中である。一方で、CL-1の発現が臨床的に応用できる可能性が改めて確認されてきた。未だ解明されていない臨床での問題を解決するため、大腸癌術後の患者のみならず大腸疾患患者における治療や生存率改善など臨床応用へと展開するための研究基盤を継続していくとともに、CL-1発現を診断に応用するために共同研究できるよう交渉中である。
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