研究課題
本研究は細胞間接着の一つであるTight Junction(以下TJ)特異的蛋白質であるclaudin(以下CL)-1の発現と大腸癌術後の再発や転移との関連性から、大腸癌術後患者に対する治療や生存率改善などへ応用するための研究基盤を確立することが目的であった。今回、以下の知見が得られたので報告する。直腸癌組織におけるCL-1発現の減少は再発や予後不良因子となりえるStageII・III直腸癌手術症例306例を用いて、CL-1の発現と臨床病理学的因子との関連性を検討した。免疫染色法を用いてそのCL-1発現を検討し、直腸癌病変全体に対する発現の範囲を計測した。ROC曲線にてCL-1の発現のcut off値を30%と算出した。StageII・IIIの直腸癌症例にてCL-1の発現が標本全体の30%より少ない症例ではそれ以上の範囲で発現している症例に比べ、有意に予後不良であった。CL-1の発現が少ない症例では腫瘍の組織型で低分化で神経周囲侵襲を認める症例が多かった。CL-1の発現低下はStageII・III直腸癌の再発や予後に関連していると考えられた。潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌では、CL-1の発現は増強している潰瘍性大腸炎手術症例から得られた手術標本を用いてCL-1を含めた発現を免疫染色法にて解析を行った。2001-2009年までに当院で潰瘍性大腸炎の診断にて大腸全摘術をうけた39症例を対象とし、そのなかで大腸癌合併にて手術をうけたのは6例(15.4%)であった。これらの症例の癌合併病変のCL-1発現を検討したところ、同じ患者の潰瘍性大腸炎の病変でない正常粘膜に比べ明らかにその発現は増強し、かつ、びまん性に発現していた。CL-1同様WNTsignal系にて発現が調節されているβ-cateninの発現も癌合併病変の細胞質や核に強く染色を認めた。このことから、CL-1は潰瘍性大腸炎の病態や形態に根本的な部分で関与している可能性が示唆された。
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