VEGFに対するモノクローナル抗体(bevacizumab)などの血管新生阻害剤は、従来の抗癌剤とは異なるメカニズムで腫瘍に作用するため、臨床で血管新生阻害効果を定量的に評価するバイオマーカーは確立されていない。有望なものとして、末梢循環血管内皮細胞(CEC : circulating endothelial cell)および末梢循環血管内皮前駆細胞(CEP : circulating endothelial progenitor)が注目されている。CECは末梢を循環する内皮細胞の総称であるが、狭義には成熟内皮細胞を示し、局所の血管壁から剥離した内皮細胞由来と考えられている。一方CEPの発見は比較的最近のことであり、1997年に浅原らによって、成人の末梢血単核球分画に、血管内皮に分化しうる細胞(CEP)が含まれることが発見され、さらにこの内皮前駆細胞が局所で増殖・分化し血管新生に関わっていることが証明された。Willett CGらは、直腸癌症例に対するBevacizumabを用いた放射線化学療法症例でCEPが治療後day3で低下することを報告している。本研究の目的は、BevacizumabによるCECおよびCEPにおける作用について臨床研究を行い、その有用性を確認することである。本研究によりFOLFOX+Bevacizumab投与直後に治療効果ありの症例は有意差をもって低下し、無効例は低下しないことが明らかとなった。またFOLFOX群では、治療効果を認めた症例であったが化学療法投与直後のCEPの低下は認めずなかったことより、Bevacizumabの追加治療による効果を反映するものと考えられた。
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