研究概要 |
化学療法後肝障害の機序に関する基礎実験では、実験計画に基づき、イリノテカン投与肝障害モデルの作製を試みた。まず、従来の報告に基づきSDラットの腹腔内に、イリノテカン40,60,80,100mg/kgの単回投与を試み、術後1週から6週まで6群のモデルについて下痢などの有害事象と肝障害発生の有無を血液生化学的、病理学的に検討した。しかしながら、諸家の報告とは異なり、肝障害の発生を見なかったため、最大容量の100mg/kgを、1週あたり4回腹腔内投与し、それを1,2,3週投与する3群について検討した。結果、100mg/kg週4回投与を2週施行し36日目に検体採取した群ならびに100mg/kg週4回投与を3週施行し、24日目の検体採取群で、GOT/GPT、T-Bilの上昇を認める傾向にあり、現在データ集積中である。今後、モデルの確定後に肝組織の病理学的検討ならびに各種有機アニオントランスポーター発現の遺伝子学的検討を行う予定である。 さらに、肝切除後肝再生時の有機アニオントランスポーター発現の基礎実験をおこなった。SDラット90%肝切除モデルを安定的に作製可能となったので、今後類洞側細胞膜のMrp4発現、Ntcp発現を含むトランスポーターの発現について検討する予定である。 また、臨床例では、化学療法後肝切除症例の病理学的検討を行い、脂肪肝、脂肪肝炎、類洞拡張発生頻度について検討中である。従来イリノテカンでは脂肪肝/脂肪肝炎、オキザリプラチンでは類洞拡張が特異的に生じるとされてきたが、現時点では必ずしも肝障害パターンは特異的ではなく、イリノテカン群でも類洞拡張を、オキザリプラチン群でも脂肪肝炎を生じており症例集積を続行中である。
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