研究概要 |
化学療法後肝障害の機序に関する基礎実験では、実験計画に基づき、イリノテカン投与肝障害モデルの確立を行った。SDラットに40,60,80,100mg/kgのイリノテカンを単回、4回/週腹腔内投与を1,2,3週投与群について検討し、100mg/kg週4回投与を2週施行36日目、及び100mg/kg週4回投与を3週施行24日目の検体採取群で、GOT/GPT、T-Bilの有意な上昇を認め、イリノテカン肝障害モデルと設定した。現在、同採取検体を用いて肝組織の病理学的検討ならびに各種有機アニオントランスポーター発現の遺伝子学的検討を行っている。 さらに、肝切除後肝再生時の有機アニオントランスポーター発現の基礎実験をおこなった。結果、SDラット90%肝切除モデルを用いて類洞側細胞膜のMrp4発現増強、Ntcpの類洞側細胞膜から細胞質内への移行を認め、肝再生時の胆汁酸値上昇の機序の一つと推定された(J Hepatol 2010)。 一方、臨床例では、化学療法後肝切除症例の病理学的検討を行い、各種化学療法レジメ毎の脂肪肝、脂肪肝炎、類洞拡張の程度ならびに頻度を明らかにした。結果、従来イリノテカンでは脂肪肝/脂肪肝炎、オキザリプラチンでは類洞拡張が特異的に生じるとされてきたが、必ずしも肝障害パターンは特異的ではなく、イリノテカン群でも類洞拡張を、オキザリプラチン群でも脂肪肝炎を生じることが明らかとなった(日本消化器外科学会雑誌2010)。 さらに、化学療法後肝転移病変の正確な局在診断を目指して、EOB-primovist MRIならいびにSonazoid造影術中超音波を導入し、各種診断法と比較検討した。ともに95%以上の感度とほぼ100%の陽性的中率で、従来の診断法より10%以上も改善され、大腸癌肝転移治療の適正化を図る上で、有用な検査であると結論づけた(APASL2011、投稿中)。
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