研究課題
本研究は3-200nm程度という大きさの抗がんナノ粒子を生体内で腫瘍特異的に集積させる方法を開発する事を目的にしている。ナノ粒子治療薬の薬物動態は既存の小分子化合物とは全く異なり、血管内投与されると速やかに肝臓のKupffer細胞あるいは組織マクロファージなどの細網内皮系に捕捉されてしまう。その結果、血中に循環する薬剤濃度が下がり、ひいては腫瘍への分布が不十分になると事が問題であった。また、治療担体をPEGで修飾するステルス化の効果も限定的であった。そこで、2001年度は患者の細網内皮系を一時的に抑制することによって、抗がんナノ粒子の腫瘍への集積量を高める試みを行った。ビスフォスフォネート製剤であるclodoronateをリポソーム化して投与するとマクロファージ、肝Kupffer細胞を一時的に消失させ得る事が知られている。マクロファージを除去したマウス皮下腫瘍モデルにナノ粒子を投与し、抗腫瘍効果を測定した。ヒト膵癌の細胞株であるSUIT-2をヌードマウスの皮下に移植した7日目にクロドロネートリポソームを投与してマクロファージを消失させ、8日目にドキソルビシンリポソームナノ粒子(ドキシル)を投与した。ドキシル高濃度投与群はコントロール群(C)に比べ明らかな腫瘍抑制効果を認めたが、ドキシル低濃度投与群は腫瘍抑制効果を認めなかった。一方、マクロファージ先行抑制群はドキシル低濃度でも、ドキシル高濃度と同程度の腫瘍抑制効果を示した。この結果は、マクロファージを除去することにより、低濃度のドキシルでも血中停滞時間が延長し、結果として腫瘍に対する十分な抑制効果を提供する事を示している。今後、ビオチン化抗体などで腫瘍細胞を標識した後、細網内皮系を一時的に抑制する事により、アビジン化ナノ粒子等を生体内で投与し、腫瘍に相乗的に集積させる事が出来る可能性が高まった。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件)
Hyperthermia (in press)(印刷中)
Journal of Applied Physics (in press)(印刷中)
Langenbecks Arch Surg (in press)(印刷中)
IEEE Transactions on 44(11)
ページ: 4452-4455
Phys Med Biol 54
ページ: 2571-2583