研究課題
進行・難治癌に対する、画期的な治療法の開発が求められる中、磁性ナノ粒子をがん病巣にのみに集め、体外から交流磁場を印加して加熱、殺傷する電磁誘導加熱癌治療の実現化を最終目標に据えている。電磁誘導加熱がん治療が成り立つためには、1000W/g_<鉄粒子>の高発熱鉄粒子を1~2mg_<鉄粒子>/g_<腫瘍>集積させる必要がある。ナノ粒子に腫瘍特異的抗原を認識する抗体を結合させて腫瘍をターゲッティングする方法では0.2mg_<鉄粒子>/g_<腫瘍>程度の集積量が最高で、我々が目標とする1-2mgとは約10倍の開きがある。本基盤Cではチェーンリピート集積法という新規技術の確立により、磁性粒子の腫瘍集積の向上を目指した。この方法は、免疫染色の技術を生体内に応用し、磁性ナノ粒子をアビジン修飾した粒子Aとビオチン修飾した粒子Bを交互に生体内に投与して腫瘍への集積を高めようというものであった。ナノ粒子製剤を生体に投与した場合、多くは肝臓や脾臓のマクロファージ(Mφ)により貪食され、腫瘍に有効に分布しない問題がある。ここで、さらに、筑波大学数理物質研究科長崎研究室との共同研究で、粒子表面をPEGで覆うことによりMφによる貪食を回避するステルス作用を持たせる事ができた。粒子のPEG化によるステルス化は比較的一般な汎用技術だが、粒子への結合のリンカーであるブロックポリマーが偶然にも腫瘍血管への特異結合をもたらしているらしく、摘出臓器における磁性ナノ粒子の分布を鉄染色(プルシアンブルー染色)を行うと、ほぼ、腫瘍血管内皮に特異的に集積していた。この様に全く別のアプローチで0.58mg_<鉄粒子>/g_<腫癌>の集積量が達成できたので、今後はこの新しいアプローチを主軸に据えて研究を展開していきたい。
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