研究課題
本研究の目的は、肝虚血再潅流障害の要因の一つと考えられる肝星細胞を標的に新たな治療法を開発することである。われわれはまず、肝虚血再潅流障害に関わると考えられている肝星細胞の収縮を制御するため、分離培養したラット肝星細胞に対してRhoキナーゼ阻害剤を単独で投与するin vitroまたはin vivoの実験系を行い、肝虚血再潅流障害が軽減されることを確認した。Rhoキナーゼ阻害剤は標的とする分子への選択性は極めて高いものの、全身投与では低血圧をはじめとする数多くの副作用の懸念がある。その解決のために、肝星細胞に特異的にRhoキナーゼ阻害剤を運搬させるためのDrug Delivery Systemとして、ビタミンAを含むリポソーム体を利用した、新たな分子細胞標的治療法を開発中である。具体的には、複数の中空リポソーム製剤を用いた際の、Rhoキナーゼ阻害剤の内包率の定量を液体クロマトグラフィーを用いて計測し、もっとも効率よく安定して薬剤を細胞に供給するできることを確認中である。また、リポソームにリガンドとしてのビタミンAを含めた場合と、含めない場合の肝星細胞への薬剤の取り込み率を調査中である。今後は最も肝星細胞への取り込みの良いDrug Delivery Systemの組み合わせを決めたうえで、薬剤単独での投与との容量・効果の違いをin vitroまたはin vivoの実験系を行い検討する予定である。
すべて 2009
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Transplantation 88
ページ: 980-986