肝虚血再潅流障害に対する分子細胞標的治療法の開発

2010 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 21591748
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 田代 裕尊 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (90359894)
• 研究分担者: 木村 康浩 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (80314756)
• キーワード: 肝星細胞 / 肝虚血再潅流障害 / リポソーム / Rhoキナーゼ阻害剤

研究概要

本研究では、肝星細胞を標的に、肝虚血再潅流障害の新たな治療法を開発する。星細胞は肝類洞内皮細胞を裏打ちする細胞で、細胞内シグナルであるRhoシグナルの制御下にエンドセリンやNitric oxide(NO)に反応し、その収縮活動と緊張状態により類洞血流を調節している。それに対し、Rhoキナーゼ阻害剤を用い虚血再潅流障害が軽減されることが報告されている。一方で、Rhoシグナルは、体細胞における運動、接着、分裂や、がん細胞における浸潤・転移などに中心的な役割を果たすシグナル伝達系である。そのため、Rhoキナーゼ阻害剤の全身投与は低血圧などの副作用が報告され、より選択的なDrug Delivey Systemが求められる。われわれは星細胞に特異性が高いビタミンAをリガンドとして含むリポソーム体を利用し、Rhoキナーゼ阻害剤を星細胞に効率よく運搬する新たなDrug Delivery Systemを考案し、肝虚血再潅流障害の新たな分子・細胞標的治療法とすることを目的とした。まず、ビタミンAを含むリポソーム体の内包化率を液体クロマトグラフィーにより測定し、至適な配合比率を決定した。次に、ラット肝において同リポソーム体が星細胞に特異的に取り込まれることを観察した。また、培養されたラット肝星細胞に同リポソームが作用を発現するのに要する濃度、時間を測定した。今後は引き続き、同リポソーム体による、星細胞の収縮抑制をcollagen gel-contraction assayを用いて、またミオシン軽鎖のリン酸化の評価をWestern blot analysisで行う予定である。

研究成果

• [雑誌論文] Selection criteria for hepatectomy in patients with hepatocellular carcinoma classified as child-pugh class B. (2011)
  • 著者名/発表者名: Kuroda S, Tashiro H, Kobayashi T, Oshita A, Amano H, Ohdan H.
  • 雑誌名: World Journal of Surgery 巻: 35 ページ: 834-841
  • 査読あり
• [雑誌論文] Splenectomy in chronic hepatic disorders : portal vein thrombosis and improvement of liver function. (2011)
  • 著者名/発表者名: Ushitora Y, Tashiro H, Takahashi S, Amano H, Oshita A, Kobayashi T, Chayama K, Ohdan H.
  • 雑誌名: Digestive Surgery 巻: 28 ページ: 9-14
  • 査読あり
• [雑誌論文] Tumor-related factors do not influence the prognosis of solitary hepatocellular carcinoma after partial hepatectomy. (2011)
  • 著者名/発表者名: Kobayashi T, Itamoto T, Tashiro H, Amano H, Oshita A, Tanimoto Y, Kuroda S, Tazawa H, Ohdan H.
  • 雑誌名: Journal of Hepato-Biliary-Pancreatic Sciences 巻: (in press)
  • 査読あり
• [雑誌論文] Treatment strategy for early hepatocellular carcinomas : Comparison of radiofrequency ablation with or without transcatheter arterial chemoembolization and surgical resection (2011)
  • 著者名/発表者名: Tashiro H, Aikata H, Waki K, Amano H, Oshita H, Kobayashi T, Tanimoto Y, Kuroda S, Tazawa H, Chayama K, Asahara T, Ohdan H.
  • 雑誌名: J Surg Oncol 巻: (in press)
  • 査読あり
• [雑誌論文] Therapeutic potential of propagated hepatocyte transplantation in liver failure. (2010)
  • 著者名/発表者名: Amano H, Hino H, Tateno C, Emoto K, Imaoka Y, Yamasaki C, Itamoto T, Tashiro H, Asahara T, Ohdan H, Yoshizato K.
  • 雑誌名: J Surg Res 巻: 167 ページ: 29-37
  • 査読あり
• [学会発表] 脂肪肝における虚血再潅流障害の機序とその治療戦略 (2010)
  • 著者名/発表者名: 黒田慎太郎、田代裕尊、五十嵐友香、谷本新学、大下彰彦、小林剛、天野尋暢、楠部潤子、大段秀樹
  • 学会等名: 第37回日本臓器保存生物医学会学術集会
  • 発表場所: 新潟
  • 年月日: 2010-11-20
• [学会発表] 術後再発に対する治療戦略-再発危険因子の解析と再肝切除、肝移植の役割シンポジウム(「肝細胞癌術後再発への治療戦略-長期予後を目指して-」) (2010)
  • 著者名/発表者名: 天野尋暢、田代裕尊、大下彰彦、小林剛、谷本新学、黒田慎太郎、田澤宏文、板本敏行、浅原利正、大段秀樹
  • 学会等名: 第65回日本消化器外科学会総会
  • 発表場所: 下関
  • 年月日: 2010-07-14
• [学会発表] 肝移植後における抗アロおよび抗HCV応答のクロストーク機構の解明と新規抗HCV療法への展開 ワークショップ(「C型肝炎に対する肝移植」) (2010)
  • 著者名/発表者名: 大段秀樹、田代裕尊、浅原利正、茶山一彰
  • 学会等名: 第46回日本肝臓学会総会
  • 発表場所: 山形
  • 年月日: 2010-05-27
• [学会発表] 肝細胞癌に対する外科治療とその成績 シンポジウム(「肝細胞癌の治療方針の変遷と展望」) (2010)
  • 著者名/発表者名: 田代裕尊、天野尋暢、大下彰彦、小林剛、尾上隆司、井手健太郎、伊禮俊充、谷本新学、黒田慎太郎、田澤宏文、板本敏行、浅原利正、大段秀樹
  • 学会等名: 第110回日本外科学会定期学術集会
  • 発表場所: 名古屋
  • 年月日: 2010-04-08
• [備考]
  • URL: http://home.hiroshima-u.ac.jp/home2ge/index.html