研究概要 |
前年度はCCND2遺伝子に対する定量的メチル化解析方法の確立とその血清レベルと肝癌(HCC)の予後との関連性を証明した。すなわち、血清メチル化CCND2の測定を治癒切除を受けたHCC70例で行い、臨床病理学的背景因子との関連性を検証したところ、血清メチル化CCND2の陽性症例は明らかに予後不良であることが判明し、国際論文へ投稿し受理された(Tsutsui et al.Clinica Chimica Acta,2010)。本年度は遺伝子操作によりCCND2の発現を調節し、in vitroにおける肝癌細胞の浸潤能力などの悪性度変化を検証したが、十分な表現形質の変化を確認できなかった。現在、肝癌細胞株を変更して、またsiRNAを再度デザインして同様の実験を行っている。一方、並行して行っていた血清中の複数のメチル化遺伝子(SPINT2,RASSF1A,BASP1,CFTR,SRD5A2,APC等)の定量的検出に成功し、このうちSPINT2とSRD5A2の2つと従来の腫瘍マーカー(AFPとPIVKA-II)との融合型診断システムを確立し、新たに登録された多施設の血清サンプルにおいて高い診断性能を発揮したため、肝癌スクリーニング検査の有用性ありと判断して国際論文(Iizuka et al. Clin Chim Acta,2011)に報告した。また、これら7つのメチル化遺伝子の中で4遺伝子のメチル化を検出し得た肝癌症例の予後が有意に不良であり、いわゆる血清でのCpG island methylator phenotype(sCIMPと命名)を定義できることを確認した。現在、これらのデータを基にin silicoでハイブリッド型予後予測システムを構築中であり、今後、独立したサンプルに対しての性能評価を行う予定である。
|