研究概要 |
肝細胞癌の治療成績の改善を行うためには、外科的治療に加え、新しい肝細胞癌の制御理論が必要であると思われる。今回、我々は、肝細胞癌の発育進展における新しい分子標的として、Embryonic leucine zipperkinase(MELK)に着目し、臨床病理学的、分子生物学的に癌の細胞増殖におけるMELKの役割を検討した(当研究は香川大学医学部倫理審査委員会の承認済み)。 1, マウスを用いたMELK発現の特性の検討:マウス正常組織を用いて、RT-PCRによりMELKについて各臓器ごとの発現様式を検討する。【結果】胸腺、脾臓、小腸、精巣での発現が著しく亢進していた。 2, ヒト肝細胞癌におけるRT-PCRを用いた発現の病理学的比較検討:当科で凍結保存してきたヒト肝細胞癌の生材を用い、正常部と癌部でのMELKの発現の違いを検討する。【結果】肝細胞癌(n=10)では、正常部0.063±0.01(mRNA/18S rRNA)、癌部0.66±0.83、転移性肝癌(N=6)では正常部0.061±0.080、癌部1.09±1.27など、癌部においては正常部に比べ約10倍に発現が亢進していることがわかった。 3, ヒトにおけるMELK発現の変化について:平成22年度検討項目であった、ホルマリン固定したヒト手術材料をもちいたMELKの免疫染色を繰り上げて行い、癌における発現様式の違いを検討した。【結果】発売されている抗体の2種類を用い免疫染色を試みたが、染色することができなかった。今後、条件を変えて染色することが必要と思われた。 【本研究の意義・重要性】MELKが癌部で発現が亢進していることを見出した。これは胎生期に発現するタンパクが癌化することで再度、発現が亢進することを示し、今後、癌治療の新しいターゲットとして研究を進めて生きたい。
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