研究課題
基盤研究(C)
肝細胞癌におけるマイクロRNA発現を網羅的に解析した。肝細胞癌に対する生体肝移植症例3例を対象にして、マイクロRNAマイクロアレイを用いてマイクロRNAの発現プロファイリングを行った結果、原発巣および転移再発巣でともに非癌部肝組織に比べて高発現するmiR-18a、逆に原発巣および転移再発巣でともに非癌部肝組織に比べて低発現するmiR-199a-3pという二つの分子を同定した。次にリアルタイムPCR法にて肝細胞癌に対する生体肝移植症例70例においてmiR-18aおよびmiR-199a-3pの個別発現解析を行ったところmiR-18aはT/N比=1. 8(p<0. 001)で癌部に高発現、miR-199aはT/N比=0. 31(p<0. 0001)で癌部にて発現が低下していた。この二つのマイクロRNA分子の臨床的意義について検討を行った。miR-18a高発現群では腫瘍マーカー(AFP, PIVKA-II)が有意に高く、腫瘍径が有意に大きいことが分かった。逆にmiR-199a高発現群は腫瘍マーカーが低く、腫瘍血管浸潤が少ないことが分かった。miR-18a高発現群とmiR-199a低発現群はそれぞれ有意に手術後の再発が多いことが分かった。in vitroの系にてmiR-18a、miR-199a-3pの機能解析を行った。miR-18aの標的遺伝子TNFAIP3、miR-199a-3pの標的遺伝子HIF1R、cdc42を同定した。ルシフェラーゼアッセイで標的遺伝子の発現が抑えられることを確認した。miR-18a、miR199aを肝細胞癌細胞へ導入することによって標的遺伝子の蛋白合成が実際に抑制されることを確認した(Western blotting法)。このようにmiRが標的遺伝子の機能抑制において肝細胞癌の進展に重要な役割を果たしていることが分かった。今回の結果によってmiRが肝細胞癌の新たな治療の標的となりうることが示された。
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Liver Int
巻: 31 ページ: 474-84