研究概要 |
Vascular Endothelial Growth Factor (VEGF)はその受容体VEGF Receptor (VEGFR)に結合することにより血管新生や組織再生に関与する。障害肝再生過程におけるVEGFとその受容体の役割について検討するために、まず簡便で再現性のある薬剤(アセトアミノフェン)性肝障害モデルを用いた。VEGFR-1 tyrosine kinase knockout mouse (Vegfr-1tk-/-)または野生型マウス(WT)にアセトアミノフェンを投与(300mg/kg, ip)し、血清ALT、肝壊死面積、生存率、肝組織mRNA発現(real time RT-PCR)、肝微小循環などの経時的変化を比較検討した。血清ALT値はWTにおいて投与後8時間でピークとなり、以後減少した。Vegfr-1 tk-/-においては24時間でピークとなり、48時間後も同レベルで、WTよりも有意に増加した。肝壊死面積の変化も同様で、特にVegfr-1 tk-/-において出血壊死性変化がみられ肝類洞構築が破壊されていた。WTは全例生存したが、Vegfr-1 tk-/-は48時間までに約30%, 72時間までにほぼ全例死亡した。肝組織mRNA発現はWTに比べVegfr-1 tk-/-でVEGF、VEGFR-2、CD31、TNF、HGF (Hepatocyte growth factor)などが低下し、MMP-9が増加した。Cyp-2E1の発現に差はなかった。肝類洞血流はVegfr-1 tk-/-で低下し、また肝類洞内皮細胞のエンドサイトーシス機能の低下がみられた。VEGFR1シグナリングはアセトアミノフェン誘発性肝障害後に肝血管新生因子や肝再生因子を増強させて類洞壁再構築や肝再生を促進させる可能性が示唆された。
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