研究概要 |
膵癌の標準抗癌薬gemcitabine(GEM)に対する感受性を評価するために、細胞株を用いて発育阻止実験を行い50%発育阻害濃度(IC_<50>)を測定した。IC_<50>値は11.6~1.34×10^6nMの分布を示し,薬剤感受性は通常培養条件下で細胞種により大きく差があることを見出した。また、IC_<50>値相当のGEM添加条件で長期間培養を行い、IC_<50>値2.4×10^4倍のGEM耐性細胞を樹立することに成功した。培養条件下の検証ではあるものの、実地臨床上経験されるGEM「抗腫瘍効果の個体差」や投与後に出現する「獲得耐性」を検討する実験系を確立できた意義は大きいと思われる。 高速液体クロマトグラフィー接続型タンデム質量分析装置(LC-MS/MS)を用い、上述の細胞株の膜蛋白85種及びGEM関連代謝酵素15種の計100種の蛋白質発現を測定、測定細胞株の2/3以上で検出可能な蛋白の発現プロファイルを作製することに成功した。膵癌細胞の膜蛋白・GEM関連代謝酵素を広く網羅した、蛋白レベルの発現プロファイルはこれまでに報告がなく、更に上述の感受性データと合わせ解析することで、個々の蛋白分子の発現と感受性の相関や関連蛋白群と感受性の相関を明らかにすることで、本研究の目的である「GEM感受性予測因子の抽出」が実現されると考えている。
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