研究概要 |
【目的】胆管癌の胆管切離断端に遺残したCISと浸潤癌におけるDNA損傷部の53BP1を介した修復機構の相違点を解明し,局所再発との関連を明らかにする.【方法】肝外胆管癌にて根治術が施行された55例をretrospectiveに解析した.胆管切離断端陽性群は断端CIS陽性群(以下CIS群)と断端浸潤癌陽性群(以下浸潤癌群)の2群に分類した.DNA損傷部の検出にはγ-H2AXモノクローナル抗体による免疫組織化学染色,DNA損傷修復仲介因子53BP1の検出には蛍光免疫組織染色を行い共焦点レーザー走査顕微鏡にて53BP1の核内発現を検出した.DNA損傷部の修復状態の検出にはp53,Ki67モノクローナル抗体による免疫組織化学染色,TUNEL法によりapoptosisを検出した.胆管癌で通常解析されている16種類の臨床病理学的因子と局所再発との関連を検討した.観察期間中央値は99か月であった.【成績】多変量解析では胆管断端(P=0.001)のみが独立した局所再発危険因子であった.累積5年局所再発率は陰性群10%,CIS群40%,浸潤癌群100%であった(P<0.0001).胆管切離断端におけるCISと浸潤癌との間でp53標識率,Ki67標識率に差は認めなかったが,浸潤癌ではγ-H2AX標識率(P=0.031)は有意に高く,apoptosis標識率(P=0.004)は有意に低かった.53BP1核内発現様式は,浸潤癌では全例びまん性集積であった.CISにおけるapoptosis標識率はびまん性集積が中央値1%に対しドット状集積では22%と有意に高がった(P=0.001).CIS群では,びまん性集積していた10例の累積10年局所再発率は100%であり,ドット状集積していた4例の0%と比較して有意に局所再発発生率が高かった(P=0.0197).【結論】胆管切離断端に遺残したCISの局所再発(浸潤癌への進展)は,DNA損傷修復仲介因子53BP1の不活化およびapoptosis減少と関連がある.
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