研究概要 |
【目的】胆嚢癌の肝内進展様式を,モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色により検討する。さらに,肝内進展様式が術後遠隔成績に与える影響についても検討する。【方法】当科で根治切除が施行された胆嚢癌162症例のうち,組織学的に肝内進展が陽性であった40症例を対象とした。各症例の肝切除標本において,通常のHE染色に加え,リンパ管内皮マーカー(D2-40モノクローナル抗体),血管内皮マーカー(CD34モノクローナル抗体)を用いた免疫組織化学染色を行った。さらに,術後の遠隔成績も調査した。【成績】肝内進展様式を,(1)肝内直接浸潤,(2)グリソン鞘内進展,(3)肝内転移結節の3型に分類すると,(1)単独は7例,(2)は24例,(3)は9例であった。(2)の24例のグリソン鞘内進展部において,リンパ管侵襲は全例で陽性,静脈侵襲は2例のみで陽性であった。グリソン鞘内進展陽性例では,「肝内直接浸潤の深さ(x)」と「グリソン鞘内進展部までの距離(y)」とが有意に相関した(r=0.52361;P=0.0086;y=1.972+0.137x)。肝内進展様式は独立した予後規定因子であり(P<0.001),肝内転移結節陽性の9例は術後1年以内にすべて原病死したが,他の肝内進展様式では長期生存例も得られた。【結論】胆嚢癌切除例の肝内進展様式ではグリソン鞘内進展が優位であり,その主な機序はリンパ行性進展である。グリソン鞘内進展に関して得られた回帰式(y=1.972+0.137x)は,個々の症例において適切な肝切離マージンを決定する際に有用である。肝内進展様式は術後遠隔成績を強く規定する。
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