研究概要 |
当院で樹立した胆嚢癌細胞株および細胞バンクの胆嚢癌細胞株におけるAQP発現(AQP1-10)をRT-PCRにて検討し、発現差が認められたAQP1,4,5,8について当院で作成された組織アレイ(TMA1150)を用い胆嚢癌について網羅的にAQP1,4,5,8を解析した。免疫組織学的評価はintensityとdistributionで総合的に評価した。AQP5の発現に関しては、胆嚢癌24例中17例で評価可能であり14/17(82.5%)と高率に発現していた。胆嚢癌細胞株(TYGBK-1)および胆嚢癌切除標本13例でAQP5発現を認めた。現時点ではAQP5と臨床病理学的所見との関連は認められていないが、正常胆嚢粘膜ではAQP5発現は一部の化生性変化部分に認めるのみであることから胆嚢発癌への関与が示唆された。またAQP5は肝癌24/27例(88.9%)、胆管癌(24/32例:75%),乳頭部癌(7/8例:87.5%)、膵癌(14/23例:60.9%)と、いずれも高率に発現しており、肝・胆・膵癌系に普遍的に作用していることが示唆された。一方AQP1発現は4/18例(22.2%)、AQP4発現は6/19例(31.5%)、AQP8発現は0/16例(0%)であり、AQP5に比して低発現であり、胆嚢癌における関与は少ないものと考えられた。我々は、これまでにヒト胃癌細胞におけるAQP-5の発現亢進が胃癌の分化度および転移浸潤能に関与することを証明して来たことから(J Physiol Sci 2009)、現在AQP5発現胆嚢癌細胞株および新たに樹立した胆道癌細胞株(TYBDC-1)によるAQP5の機能解析に移行している。
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