研究概要 |
2011年度においては、2010年度に新規に作成した胆嚢癌の組織マイクロアレイで免疫染色にて網羅的にAQP1,4,5,8を解析した。発現の割合は、AQP1(41%)、AQP4(22%)、AQP5(59%)、AQP8(6%)であった。AQP1,AQP5において、漿膜浸潤の有無とAQPの発現に関連を認め、AQP5発現は腫瘍進達度との逆相関が認められ、AQP-5発現症例は予後良好であった。さらにAQP-5発現症例はゲムシタビン、5FUに感受性があり予後良好であった。またAQP-5発現症例は黄疸時の減黄率が良好であり、AQPが胆汁濃縮に関与している事が示唆された。これらの結果から、胆汁濃縮機構の破綻が胆嚢発癌に関与する事が示唆された。一方、当科にて樹立した胆嚢癌細胞株(TYGBK-1)および細胞バンクから入手したNOZ-1においてAQP-5発現を認め、NOZ-1ではAQP-5発現をmiRNAにて抑制すると増殖能、浸潤能、運動能が抑制されたが、TYGBK-1ではAQP-5発現抑制では増殖能などには差は認められなかった。またAQP-5発現細胞はAQP-5低発現細胞株に比し、ゲムシタビン、5-FUに感受性を有していた。ゲムシタビン感受性細胞株NOZ-1のmiRNAのマイクロアレイ解析でゲムシタビン感受性に関係するmiRNAを数種類同定し、そのターゲットであるタンパク質を同定した。これらの成果により胆嚢癌の分子標的治療の可能性が示唆された。現在、新たに同定した標的タンパク質と感受性の関係を細胞株により詳細に解析中である。
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