研究課題
「膵外分泌組織の障害後再生過程において、胎生期臓器形成機構が再び活性化して組織修復を行っている」という仮説をたて、マウスモデルを用いてそれを検証することを目的とした研究を立案した。膵発生に必須の遺伝子ptf1aに着目し、Cerulein誘発急性膵炎モデルを用いて傷害後の再生過程にptf1aがどのように働いているかを明らかにすることを目指した。まず、昨年度までの検討でPTF1a発現量が極端に少ないマウスptf1a-cbll/cbllがCerulein刺激によってほとんど死亡してしまうことが分かり、研究デザインの変更を余儀なくされた。一方、別研究でSox9陽性細胞の系譜解析結果から、腺房細胞は生理的条件下でもCerulein誘発急性膵炎後の膵再生過程においても既存細胞の自己複製と膵管細胞からの分化(新規細胞供給)の2つのメカニズムで維持されていることが明らかとなった。そこで、成体膵管細胞および腺房細胞で薬剤誘導性にptf1aを不活化するマウス(Sox9-CreERマウスおよびElastase-CreERマウスとptf1a floxedマウスの交配)を用いて、ptf1aがSox9陽性膵管細胞から腺房細胞の分化に必要であるのか、あるいは分化した後の腺房細胞の維持にかかわるのかの区別を付ける事が重要と考えた。その結果、膵管細胞でptf1aを不活化した場合、腺房細胞への分化が完全に消失し、腺房細胞でptf1aを不活化すると腺房細胞が死滅してしまう事が判明した。この2つのマウスを用いてCerulein誘発急性膵炎モデルを組み合わせ、本研究の当初の目的であった組織障害後の再生過程におけるptf1aの機能を明らかにする方針であったが、それ以前に膵外分泌組織維持そのものにptf1aが必須であるという結論に至った。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (4件)
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