研究概要 |
I型糖尿病では生命維持のためにインスリン注射が絶対的適応である。一方、根治的治療として膵臓移植がおこなわれているが、慢性的なドナー不足は重要な課題である。我々は代替の細胞移植を用いた再生医療を目指し、膵臓組織幹細胞に注目してきた。これまでに、胎生期のマウス膵臓から汎幹細胞マーカーCD133を用いて幹細胞を分離し、この細胞が多分化能を持つことをin vitroやin vivoで明らかにした(Hori et al. Stem Cells, 2008)。さらに、成体膵における幹細胞を分離・培養することを目的として、CD133ノックアウトGFPノックインマウスを作製した。このCD133^<+/GFP>マウスを用いてGFPの分布を検討すると、膵臓ではterminal ductあるいはcentroacinar細胞、肝臓ではHering管、小腸では陰窩にGFPの局在を認めた。いずれも、組織幹細胞の存在が示唆されている部位であった。Cell sorterを用いてCD133陽性細胞を分離し、様々な成長因子の存在下で培養すると、未分化状態の保持やインスリン産生細胞への分化誘導が可能になった。現在、幹細胞としての特性である自己複製能やin vivoでの多分化能をsingle cellレベルで検討している。さらに、70%膵切除モデルや膵管結紮モデルで検討すると、CD133/GFP陽性の膵管様構造が再生することが明らかとなった。また、Sox9やPdx1が陽性であったことから、この再生膵管は未分化な細胞で構成されていることが判明した。この細胞が幹細胞としての特性をもち、増殖可能であるか、また、インスリン産生細胞への分化能を有するかを現在、解析している。
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