研究課題/領域番号 |
21591774
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
村上 義昭 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (10263683)
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研究分担者 |
檜山 英三 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (00218744)
首藤 毅 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10423378)
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キーワード | 癌 / 膵腫瘍性疾患 / テロメア・テロメラーゼ / 免疫療法 / 遺伝子治療 |
研究概要 |
【目的】膵腫瘍の良悪性診断は困難なことが多く、有用なバイオマーカーの開発が待望されている。多段階発癌モデルが示唆されている膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMNs)におけるテロメア長の変化、テロメラーゼ活性化を検討し発癌過程を検証した。さらに膵切除組織及び、術前膵液細胞検体におけるテロメラーゼ活性とテロメラーゼの主たる触媒因子であるhTERT発現を検討し、IPMNsの良悪性診断のバイオマーカーとして簡便に臨床応用可能であるかを検証した。 【対象と方法】膵切除152症例。浸潤性膵管癌48例、IPMNs 70例、Endocrine cell tumors 5例、粘液性嚢胞腫瘍8例、漿液性嚢胞腫瘍9例、慢性膵炎7例、正常膵管5例。テロメア長はFISH法、テロメラーゼ活性はTRAP法、hTERT発現は免疫組織染色法で検討。 【結果】IPMN病変において、テロメア長は病変の進行とともに漸減し高度異型病変で究極的短縮を認めた。テロメラーゼ活性は段階的に増加し、borderline症例からcarcinoma in situ (CIS)症例間で有意であった(P=0.0175)。膵切除組織において、浸潤性膵管癌ではテロメラーゼ活性は83%、hTERT発現は88%に検出し、両者に強い相関を認めた(r=0.726, P<0.001)。術前膵液細胞検体では、hTERT発現による細胞診の良悪性診断は、感度85%、特異度82%、正診率84%であった。また、IPMNのborderline症例において、56%でhTERT陽性であった。 【結論】テロメア長は病変の進行とともに漸減し、テロメラーゼ活性・hTERTは段階的に発現し、テロメア短縮と相関し癌化のinitiationに関与している可能性が示唆された。hTERTを用いた細胞診への応用により、形態学的に鑑別困難なbordeline IPMNs症例を機能的側面から評価することにより、high risk病変の抽出・手術適応決定に寄与する可能性が考えられた。
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