研究課題/領域番号 |
21591775
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
上田 純二 九州大学, 大学病院, 助教 (90529801)
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研究分担者 |
江上 拓哉 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40507787)
田中 雅夫 九州大学, 医学研究院, 教授 (30163570)
大内田 研宙 九州大学, 医学研究院, 講師 (20452708)
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キーワード | 膵癌 / EMT / miRNA / Redox |
研究概要 |
間葉系幹細胞マーカーを発現する膵星細胞が間接共培養下で膵癌細胞株の浸潤を促進し、マウス皮下腫瘍モデルで腫瘍の増大を促進することは平成21年度の実績報告書で述べたが、その研究をさらに進めマウス膵同所移植モデルにおいて特異的膵星細胞が膵癌細胞の浸潤を促進していることを発見した。これは間葉系幹細胞(MSC)が膵癌遠隔転移の初期のステップに影響を及ぼしていることを示唆しており非常に興味深い。また新たに、この特異的膵星細胞が膵癌細胞株との共培養下で約1.5倍に割合が増えることをつきとめ、これにより膵癌細胞が何らかの因子を介して自己の浸潤・転移に都合のいいように周囲微小環境を構築している可能性が示唆された。この現象は、間接共培養下において免疫化学組織染色検査で見られた、癌細胞の周囲に主に特異的膵星細胞が存在している所見と合致しており、問質標的治療の可能性を広げるものと考えられる。一方で、同定した特異的膵星細胞はMMP3の分泌が豊富でこれが膵癌の浸潤促進に関与しているとみられていたが、分泌型MMP3により膵癌細胞株のEMTを誘導することはできなかった。上記の結果を複数の膵がん患者由来の間葉系幹細胞を用いて解析・確認し、上記現象は膵癌間質細胞において普遍的事実であることを証明した。さらに他の治療標的と目されるCD271、CD280の解析を進めた。CD271陽性の膵星細胞は膵癌細胞の遊走能を特異的に上昇させ、CD280は基質分解による癌細胞の浸潤を促進する機能を有することを突き止めた。また転移形成時に重要な能力である足場非依存状態での膵星細胞の機能に関して検討した結果、浮遊条件で培養した膵星細胞は足場のある膵星細胞と比べて有意に膵癌細胞の悪性度を高めることを明らかにした。これらのことから、膵組織由来とは異なる性質をもつ膵星細胞の存在がより確かとなり、さらにその治療標的となりうる表面抗原の候補がいくつか絞り込めてきた段階である。
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