研究課題
最も治療困難な悪性腫瘍の一つである膵臓癌はその悪性度が早期からの転移、浸潤によるところが大きい。今回転移浸潤に強く関連するEMTの機序を、多くの遺伝子を制御するとされるmiRNA、さらには近年新たな分子標的治療薬として注目を集めるRedox関連因子との関係を解明することにより、膵臓癌の新たな診断、治療法を開発することを目的とし、本研究を行った。これまでにmiR-17-5p,miR-200c,miR-203が膵癌の予後と関連し、癌細胞の浸潤能や増殖能に影響していることを明らかとしてきた。本年度は(1)膵癌細胞株のマイクロアレイによる検討により多数のmiRNAを候補として同定した。miR-10bを検討対象とし、マイクロダイセクションを用いて膵癌組織で高い事を確認した。miR-10bのprecursorによる導入により、膵臓癌の浸潤度および予後不良と関与していることを明らかとした(Surgery)。(2)gemcitabine耐性株におけるmiRNA解析で、抗癌剤耐性に関与する遺伝子群を選び出した。ついでFFPE凍結標本の解析よりmiR-142-5pおよびmiR-204が予後に関わる因子である事を同定した。この2つに対しさらに多変量解析を行い、miR-142-5pが抗癌剤gemcitabineを用いる際の独立した予後因子であることを報告した(Ann.Surg.Oncol.)。また平成23年度はこれらを統括した複数の報告を行い、当研究室におけるmiRNA研究にひとつの区切りをつけえたと考えている。しかし、残念ながら当初の目標としていた膵癌細胞酸化ストレスEMT誘導モデルの作成には至らず、Redox関連EMTに関わるmiRNAの同定には至らなかった。これは将来への課題として更なる探究を行っていく必要が考えられた。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (4件)
Ann Surg Oncol
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