研究概要 |
ヌードマウスを用いて腫瘍細胞の門脈注入による肝転移モデルを作成し,膵癌におけるHeparin(UFH)の抗腫瘍効果とGemcitabine(Gem)抗腫瘍効果増強作用についてIn vitro, In vivoで検討、さらに抗NF-κB阻害剤(DHMEQ)の肝転移に対する抑制的作用についても検討し,gemcitabine(GEM)との相乗作用を評価した.1.In vitroではWST assayの結果,Gemは濃度依存性に増殖が抑制されたのに対し,UFHは抑制効果を示さなかった.UFHとGemとの併用ではUFHによるGemの増強作用は認められなかった.Chemoinvasion assayの結果,Controlと比較し浸潤細胞数はUFH 10U/mlで57%,100U/mlで44%,1000u/mlで41%と浸潤抑制効果を示した.In vivoでは,肝転移数はC群23.9個,H群14.7個,G群15.2個,GH群10.1個,肝重量はC群2.08g,H群1.92g,G群1.85g,GH群1.80g.以上のようにUFHによる抗腫瘍効果とGemとの増強効果の傾向を認めた.また,肝転移巣のHeparanase活性はC群3.18U/ml,H群2.67U/ml,G群1.74U/ml,GH群1.56U/mlであり,VEGF発現量はC群を100%としたものに対し,H群78%,G群65%,GH群70%とHeparinによるHeparanase抑制効果と,VEGF抑制効果の傾向が認められた.2.Cell growth inhibitlon assayではDHMEQとGEMは濃度依存性・時間依存性に細胞活性阻害作用を示した.次に雄BALB/c nude miceにAsPC-1を門脈内注入し,1)無治療群,2)GEM投与群,3)DHMEQ投与群,4)DHMEQ+GEM投与群の4群にマウスを分けた.肝転移巣数はGEM群とDHMEQ群で有意に肝転移が減少していた.アポトーシス小体数測定では,GEM群及びDHMEQ群ではアポトーシス誘導が認められた.またDHMEQ+GEM併用群では相乗効果が認められた.抗CD31抗体免疫染色での腫瘍内新生血管数測定では,DHMEQ群,GEM群,DHMEQ+GEM群の順に血管新生抑制効果を認めた.qRT-PCRを用いて肝転移巣における各種mRNA発現を測定した.DHMEQ治療群ではIL-8とMMP-9の発現が著明に低下し,一方GEM治療群ではVEGFとCyclinD1の中等度の低下が見られた.経門脈的肝転移という臨床像に近いモデルで,DHMEQは腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し,血管新生を抑制することで抗腫瘍効果を示した.DHMEQはGEMとの相乗効果も期待され新しい治療薬に繋がると思われた
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