研究課題
我々が新たに見出した胆管上皮特異的microRNA(miRNA)の転写後翻訳調節が肝胆道系疾患(肝内胆管癌、閉塞性黄疽等)関連シグナル伝達経路にどのように関わるのか、機能解析を目指すとともに、肝内胆管系疾患の分子病態の解明と診断のための新規バイオマーカー開発のための基盤研究を行った。1)miRNA機能解析:HuCCT1細胞に特異的miRNAを過剰発現させ、増殖能、移動・浸潤能の解析を行った。miRNA過剰発現HuCCT1細胞に上皮成長因子を添加し、上皮成長因子受容体(チロシンキナーゼ関連型受容体)を活性化(リン酸化)させたが、増殖の抑制は認められなかった。しかし、移動・浸潤能は有意に抑制されることを見出した。さらに、上皮成長因子受容体から癌細胞の浸潤抑制へリンクするシグナルカスケードを解明するため、マイクロアレイによる網羅的解析とバイオインフォマティクス解析を進めた。2)miRNA発現のエピジェネティック解析:miRNA発現抑制の制御機構の一端を明らかにするために、DNAメチル化解析を行った。バイサルファイト処理シークエンシング法により、胆管上皮細胞特異的miRNAの上流域に存在するCpGアイランドのメチル化解析を行った。正常胆管上皮細胞と比較してHuCCT1細胞では強くメチル化されていた。HuCCT1細胞にDNAメチル化阻害剤とヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を細胞に添加することで、胆管上皮細胞特異的miRNAの発現が検出されるようになった。HuCCT1細胞では、胆管上皮細胞特異的miRNAの発現がエピジェネティックな制御により抑制されていることが明らかとなった。3)miRNAの胆管癌バイオマーカー開発:病理標本の発現解析を進めるとともに、胆汁に含まれるmiRNA解析を行い、胆汁中のmiRNA、特にmiR-9が胆管癌のバイオマーカーとして有用であることを見出した。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
PLoS One
巻: 6 ページ: e23584
doi:10.1371/journal.pone.0023584