研究課題
大動物を用い、胸腹部大動脈瘤手術手技中に生じる腎虚血再灌流を模倣するための左右腎動脈の両側単独遮断による腎虚血モデルを確立した。体重20kgのブタを全身麻酔下に腹部正中切開から開腹し、左右腎動脈を露出しテーピングした。血行動態を安定化させのち、血液ヘパリン化後に腎動脈遮断するモデルとした。まず、常温下における腎虚血時間の条件設定を行うために、0.5、1、2時間の虚血モデルを作製した上で、再灌流時間を0、1、1.5、2、4時間として、それぞれの測定ポイントで腎実質をwedge resectionすることで病理組織標本を摘出した。肉眼レベルでは検出しづらいが病理組織では同定できる腎障害のレベルを設定し、本実験の腎虚血時間を1.5時間と設定した。対象を2群に分け。Control群とANP群とし、腎動脈を1.5時間遮断しその後再灌流した。血行動態指標に加え、腎血流量とSvO2、PaO2、および尿量を1、2、3、4、時間後に測定した。また、採血検査を行い血中クレアチニン濃度、ヘマトクリット、尿中クレアチニン濃度、尿量、そして1-メチルアデノシンを計測した。腎臓の病理組織標本を免疫染色にも供した。その結果、早期(超急性期)おける腎障害のマーカーとなり得る血清1-メチルアデノシンが、虚血後再灌流の時間経過に従って血中で増加した。その変化は腎静脈において顕著であり、再灌流2時間後で虚血前の約5倍に増加していた。その結果は抗1-メチルアデノシン抗体による免疫染色により障害腎由来と裏付けられた。その推移はANP群において軽減される傾向を示しており、現在もその再現性を確認する検証作業を進めている。