研究課題/領域番号 |
21591797
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
島村 和男 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (10507205)
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研究分担者 |
澤 芳樹 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00243220)
松宮 護郎 千葉大学, 医学研究院, 教授 (20314312)
倉谷 徹 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90448035)
坂口 太一 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (10467574)
白川 幸俊 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20457013)
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キーワード | 大動脈ステントグラフト / ナビゲーションシステム |
研究概要 |
当研究では、navigationシステムおよびCustom designstent graft systemという全大動脈に対応可能なデザインをもち、かつ3次元的に正確に安全に留置予定位置に誘導するシステムの開発を目的としている。 まずnavigationシステムの構築に関してであるが、当院ハイブリッド手術室に導入された高性能透視装置(Artis Zee TA, Siemens AG, Forchheim, Germany)は血管造影時に3次元画像を構築する3D-DSA機能を備えており、navigationの基盤となるmappingに極めて有用な画像構築が可能であることから、現在使用症例を重ね3DCTとの対比データを引き続き蓄積中である。一方、大動脈基部対応型ステントグラフトの開発では、血管内治療に対応するvalve systemが必要となるが、これにはEdwards社SAPIEN valveを導入した。これまでにEdwards SAPIEN valveを用いて本邦初となる経カテーテル的大動脈弁留置術を4例に施行し、いずれも成功させた。2010年度には更に臨床治験も開始し、同valve systemの使用データ(MDCT, 3D超音波検査など)を蓄積している。さらに、生体吸収性グラフトの自己組織化により大動脈壁と一体化するステントグラフト(SG)を開発し、大動脈解離(DAA)モデルの内膜裂孔を自己組織で閉鎖し治癒できるかを検証した。これはSG用新規グラフトとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)に生体吸収性のポリグリコール酸(PGA)を巻いた2重構造の糸を平織りにしたPET/PGAを開発し、コントロールとしてpolyester graftを用い、両グラフト(径/長12/30mm)それぞれにステンレス製Z stent(径/長20/25mm)を縫着し比較した。大動脈解離モデルの作成にはHBD犬(体重18-23kg)を用い、胸部下行太動脈の外膜を横切開して中膜を長軸方向に剥離し解離腔末梢および中枢側に内膜裂孔を作成し外膜を縫合閉鎖した。透視下に偽腔開存を確認してエントリーをSG中央部で閉鎖し、1か月後に病理組織学的評価を行った。その結果、PET/PGA群では全例でエントリー部の偽腔は治癒消失しリエントリー付近の偽腔内にのみ血栓を認めた。病理組織所見上エントリー部はαSMA陽性細胞などの自己細胞が充満し治癒しており、連続性に偽腔内も自己組織で器質化していた。コントロール群では偽腔内、エントリー部とも器質化しなかった。これから、PET/PGASGは内膜裂孔を自己組織により閉鎖し大動脈解離に対する新たなる治療法となりうる可能性を示した。
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