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胸腹部大動脈瘤手術中の対麻痺の発生を抑制するために、遮断した大動脈の下半身側を拍動流体外循環を行って肋間動脈圧を上昇させれば対麻痺発生が抑制できると考えて動物実験を行ってきた。平成22年度はビーグル犬5頭を用いて、開胸、開腹して第4胸椎から第3腰椎までの大動脈を広く剥離して、運動誘発電位と知覚誘発電位をモニターに用いて、第4胸椎から第3腰椎までの大動脈を遮断して下半身の体外循環は30ml/kgで行った。まず定常流灌流を行い、ついで拍動流灌流を行って運動誘発電位と知覚誘発電位の変化を観察した。下半身灌流を定常流から拍動流灌流にしたところ運動誘発電位が正常に復した。さらに第1～2腰椎レベルまで肋間動脈を結紮しても運動誘発電位は正常に保たれた。拍動流灌流による下半身灌流圧上昇は脊髄側副血流を増加させ対麻痺を減らす仮説が証明された。次に遮断した大動脈を一部切開して左第2腰椎動脈に細いカニューレ(24G)を挿入して大動脈切開を閉鎖して肋間動脈圧を測定した。定常流から拍動流に変更したところ収縮期血圧に約5mmHgの血圧上昇が見られた。拍動流は下半身血圧を上昇させるのみでなく、側副血流路を通じて下半身の肋間動脈圧も上昇させていることが証明された。下半身の脊髄側副血流路の血流増加に効果があることが判明したが、胸部脊髄への側副血流路にまで影響があるか否かを、来年度は第4～6胸椎にカニューレを挿入して直接肋間動脈圧を測定して検討したい。
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