研究概要 |
肺胞は1型肺胞上皮と2型肺胞上皮の2種類の細胞で構成されており、大型の薄い1型肺胞上皮が肺胞の97%をカバーしている。近年肺障害の際には肺胞でこの1型肺胞上皮が脱落すること、それを修復するために2型肺胞上皮が腫大、1型肺胞細胞に変化することが分ってきた。1型肺胞上皮細胞が変性脱落し肺胞基底膜が露出すると、線維芽細胞が遊走し肺胞内線維化が進行すると考えられている。従ってこの肺胞リモデリングの過程でタイミングよく2型肺胞上皮細胞を誘導し線維芽細胞の遊走を抑制できれば重症呼吸不全を可逆性の病態として治療する可能性がある。 平成21年には、2型肺胞上皮細胞の早期誘導が可能かどうかを検討している。 そのため、in vitroの実験を行って増殖因子存在下で培養することで増殖効果があるかどうか確認実験を行っている。セルライン化されたコマーシャルのラット気道上皮細胞を用いてHepatocyte growth factor(HGF),Epdermal Growth Factor(EGF)の増殖促進因子の存在下に細胞培養し気道上皮の増殖,成長が促進可能か否かを細胞増殖能,形態学的検討で明らかにしつつある。 サイトカイン不添加群、HGF添加群、EGF添加群の3群を48時間培養で比較した。 細胞増殖はBRDU取り込み、細胞の生存率で評価した。 HGF添加群、EGF添加群、サイトカイン不添加群の順にBRDU取り込みが高値であった。 サイトカイン添加群での至適濃度の検討を実施中である。 今後は2型肺胞上皮を用いて、選択した増殖因子下で増殖が認めることを確認後、有効であった増殖因子を遺伝子導入する実験に移行する計画である。
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