研究概要 |
【目的】石綿関連肺癌患者における液性免疫応答の解析を行い、石綿関連悪性疾患の早期診断およびハイリスク群の選別に有用なバイオマーカーを探求する。【方法および結果】当該年度は、単離した抗原遺伝子(Annexin A2)のバイオマーカーとしての有用性の検討を目標とした。(1)Real time PCR法を用いてAnnexin A2発現解析を施行。正常肺組織でのAnnexin A2発現を1.0としたとき、高濃度石綿曝露肺癌症例の肺組織で2.8倍、腫瘍組織で4.9倍の過剰発現を認めた。また、石綿小体が1,000本以上検出された肺癌症例15例においても、腫瘍組織(3.3倍)および肺組織(3.0倍)でともに過剰発現を認めた。さらに、胸膜中皮腫細胞株で5株中3株(60%)、肺癌細胞株で10株中5株(50%)に過剰発現を認めた。(2)血清中抗Annexin A2抗体価をELISA法にて測定。健常人平均値±2SD(0.421)をcut offラインとしたところ、胸膜中皮腫症例15例中8例(53%)、石綿小体が1,000本以上検出された肺癌患者血清15例中9例(60%)において抗Annexin A2抗体陽性を認めた。 【まとめ】石綿関連肺癌患者の液性免疫応答に認識される5種類の抗原遺伝子を単離・同定しこのうちAnnexin A2において、複数の石綿曝露肺癌患者の血清中に抗Annexin A2抗体を検出した。Annexin A2は、腫瘍細胞および石綿曝露肺組織で高発現することにより石綿関連悪性腫瘍患者の液性免疫応答に認識されていると考えられた。
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