研究概要 |
【背景】肺癌の死亡数が増加し、悪性腫瘍の中で第1位である理由はその治療抵抗性にある。今後、更に増加の一途をたどりその死亡数は20年後には現在の2倍になると予測されている。近年、EGFR tyrosine kinase inhibitor (TKI)が開発され、ある特定の母集団に投与すれば、一定の効果があることが証明された。しかし、当初奏効してもほぼ全症例で病態はいずれ進行し、完全に治癒することはない。分子生物学的手法の進歩にて、EGFR遺伝子の変異が獲得耐性にある程度関与していることは解明されたが、耐性に関する遺伝子の発生の必然性や腫瘍形成能におけるbiological effectは不明である。実際、増悪した転移巣にT790Mの有無に不一致がある症例やT790Mを認めない症例、また耐性後、再投与により効果を認めるといった現象を臨床の現場で経験する。本研究は薬剤感受性と耐性の変異の相互関係における分子機構の解明を通してheterogeneity(腫瘍不均一性発癌)の成因に関する知見を広げることとした。これらの知見は単に表裏一体の感受性や耐性機構を説明するだけでなく、次世代のEGFR-TKIの開発へと繋がると推測される。 【方法】EGFR可視化遺伝子導入細胞の確立(in vitro)を目的として、当科樹立肺癌細胞株におけるEGFRの発現の確認とEGFR発現プラスミドを作製中である(wild type, 19deletion, L858R, 19deletion+T790M, L858R+T790Mのplasmid DNA)。今後発現を確認し、肺癌細胞株への遺伝子導入と安定発現株の樹立、さらにそれぞれの共培養実験の腫瘍増殖能の測定とEGFR-TKIに対する薬剤抵抗低の獲得と混合比の関係の検討する予定である。またheterogeneityのモデルとしてadenosqamouse cell carcinomaが適切と考え、臨床情報を加味したデータを検証した。
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