脳梗塞は一度罹患すると多大な後遺障害を残し、患者本人だけでなく家族の生活も逼迫し、社会的損失も大きい。一度損傷を受けるとほとんど再生しない脳組織において、脳梗塞後遺症は急性期での脳損傷の程度により規定されるが、急性期脳梗塞に至っては有効な治療法は少なく、その効果や治療可能時間帯も限られているのが現状である。再生医療は、脳梗塞に対する新規治療法として期待されており、動物実験のデータが集約され、一部では臨床応用も開始されているが、どの細胞をどのように投与するのが最も効果的・効率的で安全かは、他の疾患に対する再生医療と同様、はっきりと分かっていない。 本研究では、本学で新規に開発した虚血に対する治療効果の高い血管内皮細胞(Alde-Low EPC)をラット脳梗塞モデルに投与する実験を行った。その結果明らかになったのは (1)Alde-Low EPCの投与は急性期脳梗塞において脳梗塞体積を抑制する。 (2)投与したAlde-Low EPCは脳梗塞急性期に虚血巣に集積し治療効果を発揮する。 (3)Alde-Low EPCの虚血巣への集積には、SDF-1/CXCR4系が強く関与する。 の3点であり、Alde-Low EPCの治療効果やその機序を解析するにはさらなる研究の継続が必要と考えられるが、投与した細胞が急性期においても投与後24時間という短期間に梗塞巣に集積し、血管を構築する前に治療効果をすることが確認できたことは、今後の脳梗塞に対する再生医療の研究の一端に寄与できたのではないかと考える。また、血管内皮前駆細胞の脳梗塞に対する治療因子を検討することは、必ずしも血管内皮前駆細胞の投与を必要としない脳梗塞治療法の新規開発(サイトカイン療法など)にも寄与できるものと考えている。
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