末梢神経は中枢神経と比較して再性能が高いことが知られているが、臨床例においてその程度は必ずしも十分とはいえない。このためより高いレベルの機能回復を得ることを目的とした研究は以前より多数なされてきたが、いまだ十分な効果は得られていない。近年、中枢神経系の再生過程において複数の因子が軸索再生を阻害していることが示され、その作用を抑制すると中枢神経系においても相応の神経再生が誘導されることが明らかとなっている。末梢神経系においてはもともと神経細胞が再生能を有していることから、これらの因子の関与は少ないものと考えられていたが、軸索再生阻害因子が末梢神経においてもその再生を阻害し、結果として機能回復が不十分に終了する一因となっている可能性が示されつつある。これら軸索再生阻害因子の末梢神経再生過程における関与を検討するため、本研究ではまずラットの坐骨神経を切断・再縫合するモデルを作成し、手術後7日目、14日目、21日目で神経を採取し、軸索再生阻害因子であるMAG、RGM、プロテオグリカンの免疫染色を行った。MAG、プロテオグリカンはコントロールにおいてもシュワン細胞および神経上膜を含んだ結合識にそれぞれ認められ、これらは手術後も明らかな経時的変化は認められなかった。一方RGMは術後7日目に神経周膜および神経上膜周囲の結合識で染色が増加している傾向を認めた。以上より上記いずれの因子も末梢神経再生に関与しうる可能性が示唆された。今後はこれらの関与を顔面神経の切断・再縫合モデルで検討し、阻害因子をブロックすることの効果を検討する予定である。
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