我々はOVをより効果的な治療戦略とするため悪性グリオーマに対する腫瘍溶解性ウイルスを用いて、腫瘍マイクロエンバイロメント、さらには、腫瘍血管の変化について調べてきた。ラット脳腫瘍モデルにおいてOV-HSV-1感染後に血管透過性の亢進を認め、その原因を探るべく、我々のラボではOV療法における腫瘍から分泌されるアンジオトームの変化に関する研究を行ってきたところ、血管新生因子cysteine-rich protein 61 (CYR61)の発現が有意に増加しているのを発見した。この結果に基づき以下のような計画で実験を行った。 平成22年度の計画 1.グリオーマのprimary cultureを使用することにより、同様な結果を得ることができるか否かについて検討する。 2.In vitro、In vivoにおいて、CYR61を強発現または抑制することにより(CYR61抗体の使用も含む)、OVに対してどのような影響があたえられるかについて検討する。 今回得られた結果としては 1)脳腫瘍患者から承諾を得て採取したprimaryグリオーマ細胞を用いCYR61の発現について、QPCRで調べたところ、それぞれのprimaryグリオーマ細胞において発現の違いがあるものの、OV感染後にCYR61の発現上昇が認められた。 2)昨年からの研究で、in vitroにおけるCYR61抗体を用いたOVに対する感染効率、複製効率への影響については、感染効率についてはCYR61抗体を使用することにより、抑制される傾向があった。In vivoおいてDIVAA Activation Kitを用いて、腫瘍血管新生に関して評価したところ、発現の高いクローンにおいて腫瘍血管新生の強い傾向が認められた。 以上の結果をさらに発展させ、平成23年度の計画である「CYR61をターゲットとしたshort hairpin RNA (SH-RNA)を装備したOVを作製についての検討」を始めていく予定である。
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