研究概要 |
血栓の形成による脳血管疾患は日本を始め多くの先進国において,死亡原因の上位に上がる重要な疾患である.この病気は形成された血栓が脳血管を塞いでから如何に短時間で血流を回復するかが重要である.現在の治療法は血管内にカテーテルと呼ばれる管を挿入し,血栓に直接溶解剤を注入するものであり溶解時間の短縮が求められている.本研究ではカテーテルの先端に機械的な撹拌器を取り付け,その構造の工夫により血栓の高速溶解を目指すものである.今年度は,大きな流体抵抗の中でも省電力で大きな効果が得られる撹拌器の設計を行った.具体的にはFEM解析を用いて流体と構造の連成解析を行い,撹拌器周辺流れの解明及び流体内で大きな先端振幅が得られる撹拌器の設計を行った.現在はラットの血液で製作した模擬血栓を用いて,FEM解析により設計した撹拌器の評価実験を行っている.また人血液を採取し放置し3時間後の血栓と、24時間後の血栓を作成した。血栓と同量の生理食塩水を加え、ガイドワイヤー(0.035インチ)で500回の撹拌を行い、破砕された血栓をマイクロカテーテルを用いて、吸引し残存血栓の重量を計測することで、撹拌による血栓の破砕効果を調べた。血栓の形成時間からは3時間後と24時間後を比較すると3時間後の方が残存血栓量が低く、早期の破砕の方が効果が高いことがわかった。tPA溶液を加えた後に破砕すると3時間後の血栓でも24時間後の血栓でも破砕効果が増強することが確認され、今後の振動装置を用いた早期の血栓破砕が有効であることが考えられた。今後はこれまで培った解析・実験技術を元に,実際の治療に近い環境でも安全に使用できるよう,小型化や改良を検討していく予定である。
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