研究概要 |
本研究では,代表研究者らが提案する血栓溶解用マイクロ撹拌処理装置の実用化に向けて,小型化に高出力を求める相反の問題の克服を目指す.小型化に高出力を持たせる為に,大型のアクチュエータを生体外等のサイズの制限の少ない場所に設置し,減衰の小さい縦弾性波を先端の撹拌部分まで伝え,撹拌部分に於いて,効果的な血栓溶解が期待できる機械的曲げ振動に変換する.本課題はこのような新しい動作のデバイスの設計方法の確立と実験検証,計測診断技術の確立を目指すものである.有限要素法より,デバイスの設計方法が提案され,実験によりその設計アルゴリズムの妥当性の検証と基本性能の確認を行い,期待以上の成果が得られた.また,計測診断技術の検討を行い,血管内での治療診断システムの検討を行った. 実績(1):ワイヤ型撹拌器の設計手法確立で得られた成果 数値シミュレーションにより期待した振動モードの分析を行い,デバイス全体の縦振動モードと先端の曲げ振動モードを一致させることで撹拌器が期待した振動形状を発生させることが分かった.またこの設計指針を元に実際に実験を行い,直径2mm,撹拌器先端18mmにおいて,先端部分のワイヤの曲げ振動の振幅比が10倍以上になる振動モードを発生させることができた. 実績(2):カテーテル対応型の微細振動装置を用いた血栓溶解度計測法の検討 本撹拌器は圧電素子をアクチュエータとして利用しているため,センサとしても使用できる可能性がある.本研究では申請者らが提案する圧電素子の電気的インピーダンスを計測する事で,血液の濃度を計測する技術を応用し,血栓治療時の血栓の溶解度評価方法を提案し数値シミュレーションを行った.結果として血栓溶解による濃度変化を生体外の圧電素子の電気的インピーダンスから推定できる事を示し,先端以外での血管等が接触することによるインピーダンス変化との区別が可能であることを示した.
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