研究概要 |
本研究はエストロゲン欠乏状態というヒト脳動脈瘤に近いモデルを用い、内分泌環境や血管機能修飾下の状態で低用量の水溶牲スタチンは、他の報告と同様に脳動脈瘤の増大を抑制したが、高用量のスタチン投与により、くも膜下出血をきたしたり、脳動脈瘤が増大したことから、この機序を解明するために行う。一般的に、心血管障害ではスタチンを使用するとと非常に利点が多いと考えられている。しかし、無効あるいま有害事象をもたらす症例もあることを考慮する必要がある。スタチン投与が、より安全に使用できれば、大変有意義と思われる。 骨髄由来前駆細胞は血管損傷後の修復や病巣形成に関与すると報告されている。動脈硬化巣ではスタチンはこの前駆細胞の平滑筋への分化を抑制する作用があるとされている。スタチン高用量で見られた毒性作用が骨髄由来前駆細胞による血管壁の修復抑制によるとすれば、スタチン投与では胃髄由来前駆細胞が減少する可能性があると考え、検討を行っている。 X線照射(19-10Gy)した雌性SDラットにGFPを遺伝子導入したラット(GFPラット)の骨髄細胞(5×10^7)を静脈内投与した後、脳動脈瘤を誘発し、プラバスタチン50mg/kg/day,あるいまシンバスタチン5mg/kg/dayを投薬後、摘出した脳血管の薄切切片を作製し、GFP結合蛋白の発現および平滑筋細胞とBTEB2、apoptosis関連蛋白(caspase-3,Bcl-2,Bax)等の発現を免疫染色で評価した。GFPラットでは血管壁でのGEP陽性細胞を確認できたが、実験系が確立できず、スタチンの作用を評価するには至らなかった。免疫学的評価や定量的RT-PCRを用いてapoptosisや酸化ストレス関連分子の発現への影響を調べた結果、スタチン投与により血管壁のapoptosis誘導が増強される場合があることが判明した。またこの作用はスタチンによる脂質改善作用とは独立した作用であることを示した。この結果はStrokeの誌上で発表されている。
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